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ドーナツ
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安藤さんとお菓子を作った。私はお菓子作りが得意じゃないから材料の計量係りを担当。結論から言えば、この日何種類か作ったお菓子の中でドーナツが吐き気ものだったこと。
新鮮な油を用意したにも拘らず、思えばあのドーナツは揚げてる最中からドーナツらしい匂いがするどころかおかずの匂いを発していた。反省点は私が牛乳の代わりに残っていた生クリームを入れたり、先日買ったあまり美味しくないバターを入れたりしたからだと思っている。揚げ物に不慣れな私が適当に頃合いを見て油に生地を投入すれば、数秒でかりんとうのように真っ黒になる。慌てて引きあげた。揚げた直後から堅いこと請け合いの見た目に私たちは一欠片の試食もしたくなかったけど、微かな期待を持ってトライした。ひとくち食べた安藤さんはチーズの味がする、入れてもいないのに!と怒りをあらわにした。見た目も薩摩揚げのようだと指を指し、この焦げたやつなんかはまるで猫のうんこだと普段誰よりも温厚な安藤さんが憤りを隠せないレベルのものだった。そして私は“うんこ”の前に“猫の”と付け加えるだけで表現がぐっと和らぐことを知った。また私はここで、安藤さんがその前に作っていたコーヒークッキーを“P氏のうんこのよう”だと表現しながら丸めていたことを思い出していた。P氏というのは安藤さんの猫の名前だ。やっぱりストレートに“うんこ”と表現するよりも、頭に猫の名前を加えることでグロさが和らいでいたことや、そこから選ぶ単語ひとつでえげつなさはソフィスティケイトされるという言葉のマジックを改めて知ることとなった。
確かにそこにはうんこのルックスをした2種のお菓子があることには違いなかった。私たちはそんな見た目のドーナツを渋々試食した。その食感はあまりに堅く、味もまた酷いものだったから安藤さんは酷く落胆していたようだった。見た目は不細工でもせめて味や食感が良ければいつもの安藤さんならもう一杯紅茶を飲んで携帯からお気に入りのP氏の画像を見せてくれていたと思う。もう何回も見せつけられたやつなのだけれど。



腹の立つことに個数だけはレシピに通り12個並んでいた。ドーナツを山分けしながら“こんなの持って帰っても…”と安藤さんは本心を露吐していて、私は心の中で何も食べるものがない人や味覚障害の人に差し上げる機会に近々恵まれないかと密かに願うほどだった。安藤さんは最初からクッキーを作るつもりでやって来て、そもそもドーナツを作りたいと言い出したのは私だったから、ドーナツの出来云々より面倒なことを提案して安藤さんの落胆の種を作ったことを私は落ち込んでいた。何がここまで安藤さんを落ち込ませたのかと考えたくもないけど考えてみれば、このドーナツは二次発酵までを必要とする手間暇かかる工程を経てこの出来だったからだ。冬場に暖かい場所で発酵させるにはと考えた末、布団乾燥機で温めながら布団に生地を寝かすという不衛生な提案をした私に“それいいね!”と答えてくれていたまだ元気だったときの安藤さんを思い出す。その温もりを利用してただ布団に乗っていただけのCPを見て、“発酵を見守ってくれて優しいね”と都合良く解釈して私たちが盛り上がっていたことなんかを。

お母さんが送ってきてくれたという安藤さんのエプロンはピンクのコットン地で、そこにはリュックを背負い山歩きでもしているような陽気な猫のアップリケが施されていた。そのエプロンを無言で外し、奥の部屋で畳む後ろ姿に私は掛ける言葉もないまま、安藤さんはコートを羽織って椅子に座った。お茶を飲んで行く?と言った私に“できればもう帰りたい”と言って安藤さんは立ち上がりスニーカーを履いた。ドアを出るときに“材料を無駄にしてしまってごめんね”と安藤さんは言った。私のほうこそ勝手に材料をアレンジしたうえ、布団の中で無理矢理高温で発酵させたりしたせいだと思うわ。ごめん。落胆しつつもこの失敗を少々愉しんでさえいた私と違って安藤さんは育ちがいい。大切な食材を無駄にしてしまったことを悔やんでいるのがそれでわかった。



安藤さんが帰ったあと、残った揚げ油を処理しているとき鍋から明らかにおかずの匂いがしていた。私は寝る前に先日挑戦して失敗したかき揚げのことを思い出した。翌朝インスタグラムを見ると、安藤さんは既に京都で楽しそうな1日をスタートさせていた。だから昨日の失敗の最大の原因をわざわざメールでお知らせしなくてもいいか、そのことは次に会ったときにでも話せばいいかと思った。



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ドーナツおいしそうに写ってる・・・
昔ともだちと一緒に鰹のたたきを作ったことを、思い出した。
普通のグリルしかないのに、無謀にも思い付いて友だちに電話かけたら、自転車で駆けつけて来た。
包丁を入れたら、中まで茶色の単なる焼き魚になってた。
誰かと一緒に作ると異常に盛り上がる代わりに、失敗した時の気まずさが半端じゃないことを学びました。
友情バンザイ\(^-^)/
| のぐ | 2015/02/15 11:44 AM |
品の良い安藤さんを知っているものだから、あの安藤さんが落胆し、こんなもの…と言っているなんて、目に浮かべるだけで心苦しい。それなのにどうしてこんなに面白いんだろう!
| はむやん | 2015/02/15 12:12 PM |









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