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赤ちゃん
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去年の秋のことだけど、起きたらマットレスが濡れていた。直径70〜80cmくらいの丸い染み。このか細い自分の体から出るとは思えない水分量にいくらなんでもおねしょではないと思った。何よりなぜ途中で目が覚めなかったのかという疑問に呆然としていた。大人になって言うのもあれだが少量のそれならまだわかる。トイレに行く夢を見たにしてもここまで出し切る前に気付くだろう。私の意識も股の辺りの感覚もそこまで鈍くないと思うのだ。寝ていても生温いものを感じたらまず起きるだろう。試しに匂いを嗅いでみたけど無臭でパジャマが濡れていないこともこのミステリーに拍車をかけていた。幸いこの日はベッドを使わずゲスト用の簡易マットレスを床に敷いて寝ていた。これがベッドのあの重く分厚いマットレスだったら洗えなかったじゃないか。そう思うとちびりそうだった。それから次にいらっしゃるお客様のことを考えて風呂場で踏み洗いをしなければとマットレスを裏返してみると、水分はマットレスを貫通して床まで染みていた。人間が出せる水分量の限界をやっぱり越えている。そんなわけでいくつかの検証の結果、これはおねしょではないという結論に達した。

しばらく私はこの話題でもちきりだった。会う人々に“おねしょのようで実はそうではなかったけどあれは一体何だったのか?”と語って聞かせていたのだが、“おねしょやろ”と誰もが決めてかかってきた。中には“恥ずかしいことじゃないよ、私もたまにあります”というメールをこっそりくれた心優しい友人は、結果漏らさなくてよかった自分のプチ情報を私に漏らす形となった。ぶっちぎりでホットだったこの話題に私がいよいよ飽き始めたころ、このおねしょ説を否定した人がいた。いつでも陰謀説に心をときめかせているクリーニング屋さんだった。私は近所のある服屋でその日もダベっていたのだけど、夜になりいつものようにクリーニング屋さんが集配に現れた。彼の友人も私と同様、あるとき布団の上の大きな水溜まりで目覚めたらしいのだけどそれだけではなくその人は人格まで変わったというのだった。以前は目立つようなタイプではなかったらしいその人がそれを境に陽気になり、周りを押さえ断トツで面白い人物になったと語ってくれた。そして理屈では説明できないこの変貌ぶりからやがて彼が宇宙人にさらわれたという説が浮上したというものだった。“今ではもう誰もあいつにかなわない” そうクリーニング屋さんは表現した。実を言うと自分でもおねしょだろうと薄々感じていたことが、まさかスケールも壮大なミステリーに発展するとは思ってもみなかった。それからクリーニング屋さんは“そうそう2026年に地球が滅亡するから”といつものように言い残すとセカンドバッグを小脇に抱えた。いつだって彼はこれからパーティーにでも向かうような身軽さと小粋な佇まいで帰って行く。

これを機に再熱した私は別の友人にこの宇宙人誘拐説を聞かせた。友人もまたこの手の話題に目がないタイプの人だったものだから、意義を唱えるどころか宇宙人の子供を代理出産するために私の体が使われたと力説した。“山田さんそのあとお腹大きくなかった?”と聞かれた私は自分のお腹が最近出始めていたように感じていたことを話した。それからそう言えば今は元のフラットなお腹に戻っていることも付け加えた。“ということは、もう産んだあとか”と、私の言葉が彼の疑問を一掃させたようだった。要約すると私は一度目にさらわれたときに宇宙人の子を身籠った。程良くお腹が大きくなったところで行われた2度目の誘拐。そこで何からの方法で宇宙に赤ちゃんを産み落とした私は無事布団に帰還した。理由はわからないが、水溜まりはそのときに起こる現象らしい。要するに私は既に第一子の出産を終えているということになる。子供を産んだ経験がない私でも、宇宙のどこかに自分の赤ちゃんがいると想像すると今まで感じたことのない穏やかな感情が芽生えていることに気付く。それはすやすやと眠るのりやすを見守っているときのふわっとした気持ちに似ている。知らないあいだに珍しい方法によって自分が母になっていたという驚きと感動を私は妹にも伝えたかった。2年前に母になった妹だからきっと喜んでくれるんじゃないかと思った。母親あるあるで妹と盛り上がれたら。でも何もない。それに話したところで父に告げ口され、不安にさせるだけだから黙っていた。

真夜中の天井裏で何かがカサっと音を立てている。これまで気にも留めなかった音だけど、最近ではそれが私に会いに来た赤ちゃんが立てる音なんじゃないかと思っている。先日も数人でこの話をしていたとき天井裏で赤ちゃんは微かに音を立てていた。赤ちゃんかわいいだろうな、会ってみたいなと呟いた私に“きもいって”と皆は口を揃えた。お喋りな私たちの話題はその日も目まぐるしく変わっていった。いつもなら先陣切って食いつきそうな話題だったけれど私は上の空で天井裏の赤ちゃんのことを考えていた。私に会いに来たけどいろんな理由から会えないで隠れている私の赤ちゃん。会いたくなったらいつでもここへ来て音だけ立ててください。この星は危険だから姿は見せないように。でも何かあっても母さんは宇宙船とか乗りたくありませんからね。うちには猫が2匹いるので。

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つくづく自分が凡人やな〜と安心するしガッカリする。私は昔も今もへンな話は大好きで、でも比喩としてしか分かってなくて、クッキリ境界線で締め出されてしまう。さみしい。
私はやっぱり、これは猫のシワザと思う。何かイタズラしてこぼした場所に、山田さんが気付かず布団敷いただけ。天井には、ネズミ的な小動物が住んでるだけ。しょーもな。
宇宙人のほうがいいのに。私も10本500円のビデオ見て、ヘンになる修行せなアカンのかな。
| のぐ | 2015/03/09 12:05 PM |
今日インターネットで読んだけど震災で死んだ人のオバケが出て帰ったあと座布団が濡れてたらしい。猫がこぼしただけとは思いもよらぬ新説だが宇宙人説も確かに凄い。クリーニング屋には座布団2枚。
| ザ鈴木くん | 2015/03/11 3:25 AM |
のぐさま
猫説なるほど。ま、おねしょなんでしょけどね。

鈴木くん
幽霊説出たか。まったく何しに来たのか。。
| 山田 | 2015/03/11 12:44 PM |









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