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自転車のカゴ
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生地屋の椅子に勝手に座って『わし猫好きですねん』と死んでしまった猫たちのことを誰にともなく呟いてるおっちゃんがいる。『あ、このおっさんうちと関係ないからね』と店主は私に釘を刺し、無視して反の山を整理している。



以前なら“私も猫好きです”とか言って待ち受けの2匹を披露していたかもしれないが最近はそんな気も起こらない。ついにひとりで喋ってたおっちゃんが、“猫好きでっか?”と絡んできたけど“普通かな”と私は平気で嘘をついた。



嫌でも聞こえるストーリーテラーの話によると、逃げてしまった猫が近所で大切に飼われていたこと、病気を患って可哀想な最期を遂げた猫のこと等、複数飼っていたのが推測できる。兎もいたらしい。そのあいだも店主はおっちゃんを無視している。



年季の入った店主の事務デスクの上に1枚の写真を見つけて目が離せなかった。プライベートの店主とおっちゃん、その他数名が温泉旅館の宴会場で笑っている写真だった。仲良いやんと思って見ていたのがばれたのか、『組合のんや 年寄りばっかりや』と言いながら店主は引き出しにそれを隠した。



面白い生地があるので通っているが、『あんたこんな高い生地ぎょうさん買うて、ええんかいな、大丈夫かいな』と心配してくれた店主は、上等の生地を2mおまけしてくれた。愛想のない私にこんなサービスをしてくれるなんて。生地のかたまりを担いで自転車に跨る。“あんたそろそろカゴ付けなあかんで”といつも店主に言われるこの瞬間だけ思い出す。店を出るときにもおっちゃんは誰にともなく(おそらく空中に飛んでいる自分の猫や兎に向かって)猫の話を続けていた。見知らぬおっさんの動物千夜一夜物語。悲しみで頭がおかしくなったのだろうか?私も気をつけなければ。話して気が済むのなら話せばいいと思う。ストーリーはまだまだ続きそうだった。



家に帰ったら猫がいたこと、買ってきたばかりの布を広げるとわざわざそこに倒れにきたこと。そんなことを思い出しながら自転車を漕ぐ。前を走る自転車の後ろのカゴに犬が乗っていた。たぶん頭にピンクの髪留めを付けられていることも知らないその犬は私のことを退屈そうに見ていた。変な髪留め。それで私はまた忘れかけていた“自転車にカゴをつけるミッション”を思い出した。(了)



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